
先日、水戸市動物愛護センターを訪問し、その活動内容について取材をしてきました。
驚くべきことに、同センターは令和2年の設立以来、殺処分ゼロを継続して実現しています。
(※回復の見込みがなく、痛みで苦しむ犬猫の安楽処置は除く)
この大きな変化を可能にした背景には「人と動物がしあわせに暮らせるまちづくり」という揺るぎない目的と、それを支える数々の具体的な取り組みがあります。
保護動物の受け入れから譲渡までの流れや、地域と連携した啓発活動など、現場ならではの工夫や努力を伺いました。
動物福祉や、保護犬・保護猫の譲渡に関心をお持ちの方は、ぜひご覧ください。
※センターさまの許可を頂いた上で掲載しています

弊社では、行政や専門機関との連携強化を図り、迷子ペットの迅速な保護へと役立てています。
水戸市動物愛護センター特集 |目次
1.茨城動物愛護センターのご案内
茨城県内の動物愛護に関する行政施設は、水戸を管轄する水戸市動物愛護センターと、その他市区町村を管轄する茨城県動物愛護センターの2箇所です。
茨城県動物指導センター
住所:茨城県笠間市日沢47
電話番号:0296-72-1200
※水戸市以外の茨城県内全域を管轄
水戸市動物愛護センター
住所:茨城県水戸市河和田町999
電話番号:029-350-3800
※水戸市内を管轄
水戸市動物愛護センターでは、平日にお仕事をされている方々の犬猫の見学等に対応できるよう、土曜日も開庁しています。(休業日は日曜日、月曜日、祝日)
獣医師や愛玩動物看護師が在籍しており、保護犬猫たちの健康管理やケアに取り組んでいます。
施設は事務棟と動物の飼育スペースに分かれており、ドッグランを2面設置。
ドッグランには高めの逸走防止柵を設け、ワンちゃんたちが安全で自由に遊べる環境です。

2.犬猫の保護業務
水戸市動物愛護センターでは、年間100頭以上の犬猫を保護しています。
令和6年の保護数は105頭で、犬猫はほぼ同数(それぞれ約50頭ずつ)。
開館当初は200頭を超えていましたが、さまざまな取り組みにより、年々収容数は減少しています。
保護の流れ
迷子の犬や、交通事故などで負傷・衰弱した犬猫を、職員が現地に出向いて保護します。
また、警察や市民によって一時的に保護された犬猫を引き取ることもあります。
安全で清潔な環境
施設内には去勢・避妊手術などが可能な診療室、またトリミング室があり、いずれも清潔に保たれています。
猫白血病や猫エイズなど感染症を持つ猫ちゃんは隔離され、日中は日当たりのよい、センター職員の事務室内で飼育されます。
これは、動物の性格に合わせた適切な距離感を大切にしているためです。
飼い主探しと情報発信
センターで保護した犬猫や一般の方が保護した動物、逃げてしまったペットの情報はセンターの公式ホームページに掲載されています。
そのため、ペットがいなくなってしまった場合は、まずホームページの確認が重要です。
残念ながら飼い主が見つからない場合は、センターで新しい家族との出会いを待つ生活が始まります。

3.飼育と里親譲渡への取り組み
水戸市動物愛護センターでは、保護した犬猫の飼育から新しい飼い主への譲渡まで、責任を持って取り組んでいます。
情報公開と飼い主探し
保護をしたら、センターのホームページに迷子情報を掲載します。
首輪が付いている子や、人懐っこい子は、飼い主が探している可能性が高いです。
成犬の場合、5~6割は飼い主が見つかる一方、見つからない場合は新しい里親を探します。
老犬や猫白血病・猫エイズに感染した猫などは、理解のある里親を募りますが、里親が見つかりにくいため長期収容になることもあります。
譲渡の手順
譲渡は「適正に飼育できること」を重視。
電話でのヒアリングから始め、家族構成・年齢・飼育経験などを確認・総合的に判断し、条件に合う場合はセンターで動物と面会します。
譲渡を希望する方は、希望の犬猫が見つかれば申込書を提出し、職員による自宅訪問で逸走防止策を含めた飼育環境の確認を受けていただきます。
屋内飼育を基本とし、ワンちゃんの屋外飼育の場合は逃走防止用サークル(柵)の設置を条件付けています。
譲渡前の講習とトライアル
譲渡を希望される方には、動物愛護に関する法律や正しい飼い方についての講習を受けていただきます。
さらに、譲渡予定の犬猫の性格や注意点を説明したうえで、2週間のトライアル期間を設定。
期間中は観察記録を提出してもらい、最終的に職員が再訪問して適正飼育が確認できれば正式譲渡となります。
警戒心の強いワンちゃんについては、何度か面会してもらい、施設内ドッグランでのふれあいを通じて性格を理解いただく時間を多く設けています。
また、ドッグトレーナー資格を持つ職員が、譲渡後のしつけの悩み解決のためのしつけ方教室を行うなど、支援体制を整えています。
適正譲渡のための徹底
譲渡は、動物の大きさや性格、希望者の年齢や家族構成などを総合的に判断し、慎重に進めます。
センターの最終的な目的は「最後まで適正に飼うことができる温かい家庭に送り出す」こと。
そのため、条件を満たさない場合は譲渡をお断りすることもあります。
これは動物と人の双方にとって不幸を防ぐための大切なプロセスです。
障害を持つ猫ちゃんの教育的役割
里親募集を続けている、交通事故により歩行や排泄に障害を抱える猫ちゃんは、来館した子どもたちへの学習活動で活躍しています。
事故や病気の経緯を通じて、動物への正しい飼い方や接し方を伝える教育係のマスコット猫ちゃんとして皆に愛されています。
譲渡に向けたトレーニング
保護される犬猫の中には、野良犬や野良猫、問題行動があり飼い主が飼育放棄したと思われる犬など、様々な背景があります。
特に野犬は警戒心が強いため、社会化トレーニングを行い、人との生活や犬同士の関わり方を学ばせます。
飼育管理業務の一部は犬猫展示施設を運営する「つくばわんわんランド」に委託し、年中無休で対応できる体制を用意。
問題行動が解消された後、里親探しを開始します。

4.命の大切さを伝える教育・啓発活動
水戸市動物愛護センターでは、地域の子どもたちや市民の方々に向けて、動物愛護への理解を深めるためのさまざまな活動を行っています。
センター親子見学会
小学校の児童と保護者を対象に、センターで保護犬猫とのふれあい体験などができる見学会を実施しています。
保護された犬猫がたどった経緯や、センターでの暮らしを直接見てもらい、正しい飼い方や命の大切さについて学ぶ機会です。
親子で自宅に帰った後も、動物愛護について語り合い、関心を高めてもらうことを目的としています。
施設内には犬猫に関する様々な知識を紹介する展示も多数あり、学びながら交流できる環境が整っています。
学校での出張ふれあい教室
職員と保護犬が小学校を訪問し、ふれあいを通じて正しい飼い方や動物愛護の考え方を伝える出張授業も行っています。
市内の小学校を対象にした申し込み制ですので、ご興味がありましたら、ぜひセンターへご連絡をお願いいたします。
(なお、猫ちゃんはすばしっこく逃げてしまう可能性があるため、参加はワンちゃんのみとなっています。)
市民参加型イベント
9月の動物愛護週間を中心に、市内の大規模公園等で、市民参加型のイベントを開催しています。
テントを設営して譲渡会を開催したり、犬猫の写真やプロフィールを紹介しながら、市民の方に動物愛護への関心を持っていただき、適正飼育へとつなげています。

5.正しい飼育方法の推進
水戸市動物愛護センターでは、動物の命を尊重し、飼い主の方に法律や条例を守りながら、最後まで責任を持って終生飼養していただくための指導・啓発活動を行っています。
市民からの相談対応と指導
市民の方からは、
近隣の犬が長時間鳴き続けている
散歩中にリードを放している飼い主がいて危険
夏場に日陰や水のない場所で犬が繋がれている
散歩中の排泄物の放置
といった相談が寄せられます。
飼育状況を確認し、飼い主さまへの必要な指導を行っています。
猫ちゃんについては、水戸市条例で室内飼育の努力義務が定められています。
室内飼育が難しい場合は、不妊・去勢手術の実施と首輪の装着をお願いしています。
また、糞尿被害や野良猫への無管理な餌やりなどの相談も多く、不妊・去勢手術をはじめ、トイレ環境の整備や近隣への配慮を行った適正な餌やり方法について案内しています。
適正飼養講習会
主に里親希望者を対象に、動物の適正飼育や法律上のルールについて学ぶ適正飼養講習会を開催しています。
譲渡を受ける前に、責任ある飼い主として必要な知識を身につけていただくことを目的としています。
しつけ方教室
飼い犬の問題行動を改善するため、しつけ方教室も定期的に実施しています。
飼い主の方に犬をセンターへ連れてきていただき、日頃の困りごとを聞き取ったうえで、解決のためのトレーニング方法を指導します。

6.登録・予防接種と繁殖抑制の推進
狂犬病予防対策の推進
水戸市動物愛護センターでは、狂犬病予防法に基づき、万が一の発生に備えた予防のための以下の業務も行なっています。
犬の登録および狂犬病予防注射に関する事務
狂犬病予防集合注射の実施
狂犬病予防に関する知識の普及
飼い主の方には、法律に従って登録と予防接種を行っていただくことで、動物と人の健康を守ります。
不妊・去勢手術と補助金制度
望まれない繁殖を防ぎ、オス・メスそれぞれに特有の病気を予防するため、飼い犬・飼い猫を対象に不妊・去勢手術の推進を行っています。
水戸市では、この手術にかかる費用の一部を補助する制度を設けています。
また、飼い主のいない猫についても、餌やりによって数が増えてしまう現状を踏まえ、同様に手術費用を補助しています。
地域全体で適正な繁殖管理を進めることで、動物たちが健やかに暮らせる環境を守っています。

7.見学を通じて 〜動物たちの未来を守るために〜
今回、水戸市動物愛護センターを見学させていただき、大変感銘を受けました。
まず驚いたのは、譲渡までの工程が非常に丁寧かつ細分化されていることです。
犬や猫の視点を第一に、将来の飼い主さんの暮らしや将来像まで見据えたサポートや指導、確認が行われていました。
時には少し手間に感じられるかもしれませんが、それこそが動物と人の幸せな暮らしを長く続けるために欠かせないプロセスだと感じます。
施設内は清潔で温かい雰囲気に包まれており、一般的に抱かれがちな「保健所やセンターは怖い場所」というイメージはまったくありませんでした。
もちろん、収容される犬や猫の数を減らすことはとても大切です。
しかし現実的に「ゼロ」にするのは難しいかもしれません。
そのため、これから飼い主になるかもしれない私たち一人ひとりが、不要な繁殖や放棄を防ぐ意識を持つことが必要です。
動物と暮らすということは、命に向き合い、責任を持つということ。
これからも地域全体で、犬や猫と人が共に幸せに生きられる社会を目指していきましょう。


